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オンライン診療は普及するか

2019年8月13日 at 6:53 PM

2018年の診療報酬改定では、オンライン診療の評価が新設されました。さらに次期改定では、オンライン服薬指導の評価が議論されています。オンライン診療は、従来の枠組みを超えた新しい取り組みです。これまで「ICT化」といえば、従来行っていた紙での業務をコンピュータに置き換えることを指しがちでしたが、ICTを活用して新たな効果を得ようという取り組みが始まっているのです。

オンライン診療の考え方

オンライン診療とは、患者様が診療所に行かなくてもPCやスマホで受診でき、モニターを通して医師が患者様を診療する仕組みです。この仕組みは、クラウドコンピューティングやスマートデバイスといった技術が実現した、新たな診療スタイルです。 

オンライン診療というと、「実際に患者さんに触れて診察しなければ、診断はくだせない」と否定的にお考えの方も多いかと思いますが、実は実際にオンライン診療を行っている医師も、この意見には全く同意しています。「診療は基本的に対面で行う必要がある」と、誰もが十分に理解している一方で、患者様の状況や一部の疾患によっては、オンラインという新たな手段を活用することで診療に資することができるのではないかという考え方です。

たとえば、引っ越しや出産、業務が忙しいなどの理由で、直接来院し継続的に受診することが難しくなった患者様に対して受診機会を提供するために、オンライン診療は有効です。オンライン診療を活用されている医師は、「オンライン診療は患者さんにとってお守りのようなものなんです。いざというときに使ってもらえればそれでいいんです」とオンライン診療の意義を説明していました。

オンライン診療があるだけで継続的に医師とつながっていられる、距離の壁も時間の壁も大きく下がるというのです。この仕組みは、(いまは法的にできませんが)将来的には日本だけでなく世界で受診機会を創造するかもしれません。自分を頼ってくれる患者様が、物理的な理由で来られなくなる、継続的な診療を断念しなくてはならなくなる。「かかりつけ医」を推進している我が国にとって、オンライン診療は継続受診のための重要なツールであると感じます。

遠隔診療の可能性

オンライン診療とIoT(Internet of things)を組み合わせることで、さらに多くの情報を得ることが可能となります。IoTとは、様々な機器がインターネットにつながって、いまよりもできることが増えていく様を表現した言葉ですが、現在、医療向けに様々なウェラブル端末や感度センサーが取り入れられようとしています。これらの技術を活用することで、場所が離れていても血圧や脈拍、体温などのバイタル情報をモニタリング可能になります。また、連携する医師や看護師が現地にいれば、さらなる治療の可能性が広がります。

今後これらの最新技術は、多くのエビデンス(根拠)を積み重ね、信用を得ていく必要があります。そのため、多くの医師がチャレンジし、スピーディーにエビデンスを集める仕組みが求められています。オンライン診療やIoTを単なる目新しさによるブームで終わらせてはいけません。医療現場のスタッフが本当に医療の質向上に資するものを選び出し、上手に活用することで、これまで断念していた様々なシーンでの診療・治療機会が創出できると考えます。そこには「患者様のために」という視点が大切なのです。

オンライン診療は普及するか

さて、そういった医療者側のチャレンジのほかにも、オンライン診療が普及するためにはいくつかのハードルがあると考えられます。ここでは、一般論としての「ICTの普及条件」をもとに、オンライン診療の普及に必要な要素を整理してみましょう。

ICTが普及する最初の条件は、「ICT活用の効果が明確であること」です。オンライン診療の場合、いまのところ医療機関の売上増にすぐつながるとは言い切れませんが、患者様の受診機会を創出し、患者様の離脱を減らし、医師と患者様が継続的につながることはリピート効果として得られるでしょう。また、医師と患者様の両方が効果を実感できることが大切な条件です。

従来の運用をそのまま置き換える形のICT化は、どうしてもアナログとデジタルの比較になります。一方で、オンライン診療は「これまでなかったものがICTによって実現できた」という新しい価値を提供します。「オンラインでつながるという新しい診療スタイルの実現」は、ICT普及の重要な条件を実現しているといえます。

2つ目は、「誰でも気軽に導入できる操作性と価格が担保されていること」です。ICT化は、パソコンなどデジタル機器の使用を伴いますから、誰でも使える操作性と導入にかかるコストが普及の重要な条件となります。現在、遠隔診療の導入コストは低く設定されていますから、導入のハードルは低いといえます。

3つ目として、医療機関のクライアントである「患者様がその利用を支持すること」が大切です。誰のためにIT化を進めるのかという問いに対して、オンライン診療は患者様のためにと答えることができるため、導入に対する医療機関と患者様の同意形成が可能なのだと考えます。

最後に、「規制緩和や政府の後押しがあること」も重要です。規制緩和とは、新技術の登場や人々の意識、生活習慣といった社会環境の変容を背景に、既存の法規制等を政府が変更して市場競争や経済活性化を促す動きです。現在、診療報酬改定においてオンライン診療に関する評価が活発に議論されていますが、これは言い換えれば、ITを活用して超高齢社会を乗り切ってほしいという政府の願いが込められていると考えます。このような機運がIT化の背中を押すのだと思います。

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