リピート患者を増やすことがクリニック経営に与える影響とは?

リピート患者を増やすことがクリニック経営に与える影響とは?

クリニックを安定的に経営するために充分な収益を上げていくためには、当然のことながら、患者さんの数を増やすことは大変重要です。

増患対策を考えたとき、重要になるのが「再来患者数」を維持または増加させることです。楊が経営しているスマイル眼科クリニック(横浜市青葉区青葉台)での実際の割合を見ると(下図)、2015年7月の全体の患者数のうち、新規は13.9%、再来は86.1%という結果になっています。この割合だけを見ても、患者のリピート率を高めることがいかにクリニック経営に大きな影響を及ぼすかをご理解いただけるでしょう。

スマイル眼科クリニックにおける新規患者数と再来患者数の割合

経営の視点から見た、「新規顧客」と「既存顧客」の違いとは

1:5の法則

1:5の法則とは、新規顧客を獲得するには、既存顧客にかけるコストよりも5倍のコストがかかるという法則です。

たとえば、まだクリニックの存在を知らない患者さんを獲得するために対策を行う場合を考えてみましょう。増患対策についてはこちらの記事でも詳しくご紹介していますが、新規患者を獲得のためにホームページの充実や看板や広告等の出稿などの対策を行うとなると、何かしらの作業を外部の専門家に依頼したりランニングコストが発生したりして、ある程度のコストがかかってきます。一方、既存の患者さんに適切な再診を促したり、体調を崩した時にリピートしてもらえるような対策を行う場合、院内で対応できるケースも多く、圧倒的に低コストになる、または、低コストになりやすい傾向があるということをこの法則は示しています。

1:5の法則

5:25の法則

先の1:5の法則は獲得コストを表していました。一方この5:25の法則は、顧客離れが5%改善されると、利益率は25%改善されるという法則です。

クリニックに置き換えると、1日100人の診察を行っていて、新規患者が40人、再来患者が60人のクリニックの場合、1日3名患者数を増やすだけで、25%の利益率アップが期待できるということになります。

背景には、既存顧客が増えると①口コミが増えやすくなる、②新規顧客獲得対策のためのコストがかからない、③説明をある程度省くことができスタッフの業務を圧迫しづらい、④さらに高額な商品やサービスの購入につながりやすい、などの要因があります。

これらの法則はもちろん経営一般の法則性なので、そのままクリニックに当てはめられない部分もあるかと思いますが、クリニック経営においても、顧客離れを防ぐこと、すなわちリピート率の向上が、利益率の向上に非常に有効であることは間違いありません。

安心して通える、かかりつけ医へのニーズの高まり

次に、患者さんの視点から再来院のメリットなどを考えていきましょう。

日本医師会総合政策研究機構 が発表している『第5回 日本の医療に関する意識調査』によると、約7割の人が「最初にかかりつけ医など決まった医師を受診する」ことを希望しています。

その一方で、かかりつけ医をもつ人はまだ5割程度しかいません(同調査より)。患者さん側にも、気軽に受診できたり、常に相談できたりするなど、信頼感のあるクリニックや医師へのニーズがあり、かつそうしたニーズが未だ満たされていないことがわかります。

クリニック経営の肝は、リテンションマーケティング

ここまで見てきてよくおわかりいただけたかと思いますが、クリニック経営の肝は「リテンションマーケティング」つまり、「患者維持のマーケティング」です。いかに患者さんとの信頼関係を築き、繰り返しクリニックを訪れてもらえるようにできるかが、クリニック経営を大きく左右します。

それでは、実際に患者の維持、リピート率の向上のために具体的にどのような施策を行うべきかを見ていきましょう。

リピート患者を増やすためのポイントとは?

1.再受診の目安日をしっかりと伝える

再受診の日程を患者さんに伝える際、口頭のみで伝えることは多くのドクターがされていると思います。ここではもう一工夫して、「紙」で次回の受診の目安をお渡しする方法をおすすめしたいと思います。

紙があると手元に残るため、自宅で家族に報告したり、診察券といっしょに大事にとっておいたりと、患者さんご自身が忘れにくく、また、家族にも再受診の日程が情報として伝わりやすくなるため、適切な再来院を促す(うっかり再受診を忘れることを減らす)効果があります。

また、残る形で再受診の目安日を伝えることで、患者さんからの問い合わせが減るなどスタッフへの負担軽減効果も期待できます。

事例:同じ受診目安でも、口頭だけでなく、「紙」でお持ち帰りいただけるのが大きい|Beeメッセージ導入事例(アイケアクリニック)

2.患者が「信頼できる」と感じるコミュニケーションを心がける

意識調査においても、患者さんが病院に抱える不満の第2位には「医師の説明」がランクインしています。弊社が2008年に行った患者調査でも、患者から見た「信頼できる医師」の条件の第一位として、31%が「説明がしっかりしていること」、次いで25%が「対応、姿勢、人柄がよい」、24%が「患者の話を聞く」をあげ、「知識・技術が優れている」(14%)を大きく上回っています。

患者さんとのコミュニケーションに関する詳細なコツなどは、 引き続きこちらのブログでご紹介していきます。

3.スタッフの対応も患者目線で

医師との接触時間に負けず劣らず、スタッフと患者さんの接触時間や回数は自然と多くなります。

たとえば、受付時の案内ひとつにしても、「お名前お呼びするまでお待ちください」だけの場合と、「30分ほどでご案内しますので、あちらの空いている席でお待ちください」のように、待ち時間目安や空いている席をご案内した場合を比べると、患者に不安や不快な気持ちを抱かせる可能性を減らすことが可能です。

患者さんの満足度は医師とのコミュニケーションだけでなく、クリニック内での体験すべてが影響します。満足度を上げ、再来院してもらえるよう様々なコミュニケーションポイントで患者さん目線の対応を心がけることが大事です。

参考:iPadで使える患者満足度調査:Bee患者満足度調査

常に患者との関係を意識したクリニック運営を

ビジネスの世界には、CRM(Customer Relationship Management)という言葉がありますが、現在のクリニック経営においてもしっかりと意識すべき言葉になりつつあるようです。

新規増患とリピート率向上にバランスよく取り組むことで、クリニック経営の安定性はグッと高まります。ぜひ、まずは経営するクリニックの売上構成比等をチェックするところからスタートしてみてはいかがでしょうか。




開業医が知っておきたいクリニックマーケティングの基本




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