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日米の調査にみる医師と患者の信頼関係を生むコミュニケーションとは?

2015年9月15日 at 5:30 PM

日米の調査にみる医師と患者の信頼関係を生むコミュニケーションとは?
医師患者間のコミュニケーションの改善は、「よりよい医療」を実現する上で避けることのできない問題です。しかし、患者が医師に求めるコミュニケーションや、現状のコミュニケーションの課題を把握することは容易ではありません。

今回は、アメリカにおける医師・患者間のコミュニケーション問題に関する記事と、弊社が2008年に実施した医師や患者へのアンケート調査をもとに、医師と患者が望ましい関係を構築するうえで抑えておくべきポイントについていくつかの視点からご紹介します。

アメリカでも深刻な医師と患者のコミュニケーション問題

ニューヨーク・タイムズに掲載された、“Doctor, Shut Up and Listen”という記事によると、アメリカのJoint Commission(アメリカで病院などの医療機関やヘルスケアプログラムの認証をおこなっているNPO)は、「病院における治療の結果、健康状態が改善しない・悪化する原因の7割は、コミュニケーションにある」という調査結果を発表しています。この数字は、医師の治療技術が原因となる場合よりも多くなっています。

また、ある研究結果によると、患者の3分の2は自分の診断内容を理解しておらず、別の研究では、60%以上が医師の指示を正確に理解していないことが明らかになっています。一方で、医師が患者の説明を遮るまでの時間はわずか18秒(!)であることが明らかになっています。

ここには、ミスコミュニケーションやコミュニケーションの不足の問題だけでなく、医師は(ここは、「医師は」というより「人は」という方が正しいでしょうが、)忙しくなればなるほど患者への「共感力」が薄れる傾向にあり、これがコミュニケーションの質や量をさらに低下させていると指摘しています。

あるケースでは、大切な人を亡くして打ちひしがれ泣いている患者に対して、「腹痛はどうなりましたか?」と聞いた医師もいたといいます。その医師にとっては、腹痛を早くケアすることが責務であり、その目的に沿って発したひと言が、コミュニケーションの質を(少なくとも患者にとっては)著しく低下させてしまったのです。

もちろん、医師患者間のミスコミュニケーションの原因が医師だけにあるわけではありません(私も患者として、使っている薬の名前が思い出せなかったり、すぐに説明を理解できず度々質問してしまったりと、先生方にご迷惑をおかけすることがよくあります)。しかし少なくとも、医師患者間のコミュニケーションは改善される余地が残されており、医師や医療従事者が何らかの改善を試みる価値が高いことは確かなようです。

実際同記事は、先の医師グループが、医師と患者のコミュニケーションを改善すべく診察のロールプレイングトレーニングや医師のコーチシステム(診察に同席しフィードバックを行う)を導入した例を紹介しています。その結果、2年間後には患者満足度が大きく向上したといいます。

また、複数の研究で、患者の満足度と健康状態には相関関係があると報告されています。たとえば、ハーバード大学の医療政策学の研究員は、The New England Journal of Medicineにおいて、高い患者満足度は心臓発作や心不全、肺炎の症状改善と関連があると発表しています。

医師患者間のコミュニケーションの質は、医療そのものの質とも密接に関係しているのです。

参考:Doctor, Shut Up and Listen – The New York Times

日本:医師・患者・専門家のアンケートから見える「医師の患者の関係性」

一方、患者にとっての「信頼できる医師」とは、どのような医師なのでしょうか。弊社が2008年に行ったアンケート(回答患者数=206人)を元に確認していきましょう。

  • 1位:説明(31%)
  • 2位:対応、姿勢、人柄(25%)
  • 3位: 患者の話を聞く (24%)

患者から見た「信頼できる医師」とは?

と3位まで、全体の8割がすべてコミュニケーションに関わる項目になっています。

先のアメリカの例でも「医師が患者の話を聞かず、患者は医師の説明を理解していない」現実があることをご紹介しましたが、日本の患者も「丁寧な対応で話を聞いてくれ、説明もしっかりしてくれる医師」に信頼感を感じることがアンケート結果からもうかがえます。

もちろん、4位の知識、技術(14%)も大事ですが、技術よりむしろ、1〜3位の3つの要素が患者の医師に対する評価の前提となっていることは見逃せません。

病医院内での嫌な思いや体験も「コミュニケーション」が原因に

一方、病医院内での嫌な体験も、コミュニケーションに起因しています。

病医院での「嫌な思い」や「体験」

上図が示すように、病医院内での不快な体験は、

  • 1位:対応、態度、口調、姿勢(34%)
  • 2位:診察・治療・検査・処方内容(21%)
  • 3位:聞く、問診、説明(16%)

となっており、「診察・治療・検査・処方」に関わる内容(21%)よりも、問診で面倒くさそうな態度をされた、質問をしたら封じられた、患者によって態度が違う等の「対応や態度、口調、姿勢」(34%)が明らかに上回り、1位となっています。

「聞く・問診と説明」(16%)と、「プライバシーの侵害」(7%)を含めると、実に57%もの病医院での嫌な思い出や体験は、コミュニケーションが原因となっています。アメリカだけでなく日本でも、患者と医師の間でミスコミュニケーションやコミュニケーション不足が生じ、満足度に大きな影を落としていることがわかります。

患者と信頼関係をつくるためのコミュニケーションの流れ

日米の例やアンケートをもとに医師と患者のコミュニケーションの現状や問題点を確認してきました。

信頼関係を構築するには、互いの認識の違いを理解し、相手の認識に沿ったコミュニケーションを心がけることが重要になります。

先にご紹介したアンケート結果から、医師が考える診療やその前提条件と、患者の考えるそれらとのギャップをまとめました。

医師が考える診療と、患者が求めている診療とのギャップ

さらに、医師の対応や態度で気になったものとして、「舌打ち」や「ため息」、「相槌がおざなり」など、おそらく医師の側は無意識にしているであうと考えられる、ついつい軽視してしまいがちな項目が数多く上げられました。患者は、医師が思っている以上に医師の対応の姿勢を見ています。ついため息や舌打ちをしていないか、きちんと相槌等を打つことで話を聞いていることを患者に伝えられているかどうか等、患者にとってネガティブに映る行動をとっていないかを含めて、普段の「聞く」姿勢に注意すると効果的なようです。

コミュニケーションによる信頼関係の構築で、患者満足度の改善を

患者との信頼関係を構築することは、患者満足度を大きく左右します。そして言うまでもなく、患者満足度はリピート率の向上にもつながりクリニック経営に直結するのみならず、先に示した通り医療の質をも左右する重要なファクターです。

ぜひこの機会に、患者に対するコミュニケーションで改善できるところはないか、一度現状のコミュニケーションを振り返り、課題を棚卸しして、クリニック全体でコミュニケーション力を高める試みをスタートしてみてはいかがでしょうか。




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