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なぜ今クリニック経営にマーケティングが必要なのか?

2016年10月20日 at 5:30 PM

クリニック経営とマーケティング

私たち開業医は、多くの場合、開業する時には「自分の理想とする診療を実現しよう」と希望を胸に抱いているものではないでしょうか。しかし実際に開業してみると、患者数が思うように伸びない、スタッフがなかなか定着しない、あるいは、患者さんが来すぎて対応が追いつかない等、様々な問題が待ち構えています。

そのうえ私たち医師は、医学については長い時間をかけて学んでいますが、経営については知識も経験も乏しく、どのように対処してよいかわからない難しい場面に遭遇してしまうことも少なくありません。

そんな私たちがクリニック経営にアプローチする際に大変有用なのは、「マーケティング」です。マーケティングというと、お金儲けのビジネスのための概念でありツールであると思われる先生もいらっしゃるかもしれませんが、マーケティングのノウハウを上手に医療に取り入れ活用することで、私たちは、問題や課題をより解決しやすくなるだけでなく、「よりよい医療」を「より多くの患者に」提供できるようになります。同時に、医療スタッフ、そして医師自身のモチベーションやQOLを向上させることも可能になり、自院を”理想のクリニック”にぐっと近づけることができるようになるのです。

今回は、医療におけるマーケティングとは何か、その定義や基本的な概念についてご紹介したうえで、クリニック経営におけるマーケティングの必要性と重要性についてお話したいと思います。

マーケティングの定義とは?

ここで、簡単にマーケティングの定義についておさらいしてみましょう。
マーケティングの本質を一言で言うならば、「買い手と売り手の間における価値交換を効率化すること」です。売り手は製品やサービスを買い手の「ニーズ(必要性)」や「ウォンツ(欲求)」を満たすために工夫と努力を繰り返し、買い手は提供される価値に対して時間や金銭などの対価を支払います。この価値交換過程において、買い手と売り手の双方を満足させる良循環を築くことが重要になります(下図)。

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医療におけるマーケティングとは?

それではこのマーケティングを、医療経営の視点からどのように捉えるべきなのでしょうか。

現代マーケティング学の大家であるフィリップ・コトラー(ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院SCジョンソン特別教授)は、マーケティングを

「充足されていないニーズや欲求を突き止め、その重要性と潜在的な収益性を明確化・評価し、組織が最も貢献できる標的市場を選択したうえで、当該市場に最適な製品、サービス、プログラムを決定し、組織の全成員に顧客志向、顧客奉仕の姿勢を求める組織上の機能である」

と定義しています。

これを医療経営におけるマーケティングに当てはめてみると、

「充足されていない患者のニーズや欲求を突き止め、医学的な意義と経営的な側面からその重要性を明確化・評価し、自院が地域で最も貢献できる対象患者層を想定したうえで、対象患者層に最適な医療サービスの内容を決定し、医師含めたクリニックの全スタッフに、患者志向、社会志向の姿勢を求める組織上の機能である」

と定義できます。

この定義を改めて見てみると、医療においてマーケティング的発想と手法は決して新しいものではないことがご理解いただけるかと思います。患者本位の診察を心がけ、地域で最も患者さんに支持されているクリニックでは自然と実行していることだからです。

これからの医療で、”現状維持”は”右肩下がり”である

ここで、経営の大原則である下記の式を確認しましょう。

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この式にあります通り、「患者数」と「診療報酬単価」、そして、「コスト」がクリニックの経営基盤となる「利益」を決めます。非常にシンプルではありますが、この式は経営の大原則としてしっかりと抑えておく必要があります

診療報酬単価は、診療科によって多少のばらつきはあるもののここ数年減少傾向が続き、今後もそうした傾向が続くことが予想されます。診療報酬単価が下がっていくということは、患者数に変化がなく、同じくらい忙しく、経営的にも同じようにやっていけているだろうと思っていても、実はジリジリと利益は目減りし、経営が悪化していくことを意味します。

つまり、今の時代においては、クリニックが「現状維持」の経営を続けている限り、実態としての経営状態は悪化してしまうのです。

そうしたなかで患者数まで減少したら、何が起こるでしょうか。

こんな試算があります。仮に、当初の利益率を10%と高めに想定しても「診療報酬単価」が5%下がり、「患者数」が5%下がると、利益はなんと、ほとんどコストに打ち消されてゼロになってしまうのです。

もし、これに加えてコストが上昇傾向にあると、現実はこの試算よりさらに厳しくなります。

「理想のクリニック経営」を実現するために、マーケティングは不可欠

先ほども申し上げた通り、医療において、マーケティング的な発想と手法は決して新しいものではありません。患者本位の診察を心がけ、地域で最も患者さんに支持されているクリニックは自然と実行していることです。

しかし、それでも敢えて意識的にマーケティングをクリニック経営に取り入れる意義は、これまで感覚的に行っていたことを、他業界での事例なども参考にしながら体系化、仕組み化を行うことにあります。仕組み化を行うことで、より効率性と継続性、さらには精度を高めて、より効率的、効果的にクリニックの経営を改善し、理想の状態に近づけていくことができるようになります。

時代の変化に負けない、タフなクリニック経営で、理想のクリニックを実現する。
マーケティングは、そのために不可欠かつ有効なツールと言えるでしょう。

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