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「働き方改革」シリーズ第3回 医師の「働き方」の実際

2018年5月22日 at 1:29 PM


現在、政府主導で議論が進んでいる「働き方改革」。今後、医師やコメディカルの働き方、クリニックの運営にどのような影響を及ぼすのでしょうか。本シリーズでは、「働き方改革」とは何なのか、また、今後医療機関における働き方改革はどのような方向性で進んでいくのか、そして、クリニックをはじめとする医療機関において今後検討すべきポイントについてレポートします。

前稿では、現時点での医師の働き方のうち、大きな焦点となっている「勤務時間」について、2017年3月に発表された「医療勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の 取組みに対する支援の充実を図るための調査・研究事業報告書」、および、「医師の勤務実態について(資料)(厚生労働省 2017年8月、9月)」等を元に見てきました。今回は、実施された調査の結果をご覧に入れながら、働き方改革のその他のポイントのうちのいくつかを、データとともにご紹介します。

時間外労働の実態を誰も把握できていない

前回のレポートにもあったとおり、医師は他の業種に比べ時間外労働が非常に多いことが今回の調査でも明らかになっています。その一方で、図1に見られるとおり、半数近い時間外勤務は報告がされておらず、医療施設が医師の時間外労働の実態を把握できていないことが示されています。

図1 時間外労働時間の申告状況

図1 時間外労働時間の申告状況


出典:医療勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の 取組みに対する支援の充実を図るための調査・研究 事業報告書(厚生労働省 2016年)

時間外労働時間を時間外労働時間通りに申告しない理由としては(複数選択可)、「自分の都合や、自分のこだわりのために残業したから」が29.9%で最も多く、「その他」(45.1%)の自由記述を分類すると、「申請が面倒」、「忙しくて申請を忘れる」などの理由で申告していないという回答が9.0%、「一定額の時間外手当が支給されている」が 8.4%。続いて、「申告制度がない・残業規定がない(知らない)」、「慣例で申告していない」、「時間外手当がない」等も 1 割程度見られています。

しかしこれらの実態は、本来であれば少なくとも医療施設側が把握・管理できていてしかるべきものであり、現在医師の働き方改革を検討する舞台となっている「医師の働き方改革に関する検討会」も、「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」(2018年2月)の中で、各医療機関に「まずは医師の在院時間について、客観的な把握を行う」ことを求めています。

勤務時間が長いと、待機時間の割合は増加する

こんな結果も明らかになっています。
病院勤務の医師の勤務時間の内訳(図2)を見ると、勤務時間が伸びれば伸びるほど待機時間の割合が大きくなる傾向が見られることがわかります。もちろん、勤務時間の長さは業務効率や生産性だけによって決まるものではありませんが、この結果から、少なくとも長時間労働と業務効率や労働生産性には負の相関があることが読み取れ、業務効率や生産性を高めることで、同様の価値を提供しながらも勤務時間を短縮し医師の負担を軽減する工夫の余地が存在している可能性が示唆されます。

図2 週当たり勤務時間40時間以上の病院常勤医師の勤務時間の内訳

図2 週当たり勤務時間40時間以上の病院常勤医師の勤務時間の内訳


出典:医師の勤務実態について(厚生労働省 2017年9月)

子育てや育児で理想的な環境をつくるのは、男女ともに難しい

続いて、ライフステージを通じた働き方の変化を見ていきましょう。図3はM字曲線と言われるもので、主に子育て中の女性が離職するケースが多いことを示しています。これは他の業種にも見られる傾向ですが、第1回でお伝えしたとおり、今回の「働き方改革」は「就職の際に既卒者が冷遇される壁、再チャレンジを阻む壁、子育てや介護との両立という壁、定年退職・年齢の壁、男女の役割分担の壁等の壁を取り除き、今社会に埋もれてしまっている潜在力を活かして少子高齢化という日本の構造的問題の克服を図ること」を目的としているため、少なくとも本人が希望していない形での育児等による離職を防ぎ、M字曲線を和らげるための何らかの施策を検討していくことになります。

図3 医籍登録後年数別の就業率

図3 医籍登録後年数別の就業率


出典:医療勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の 取組みに対する支援の充実を図るための調査・研究 事業報告書(厚生労働省 2016年)

また、育児中の働き方についての調査結果(図4)では、男性医師は実に半数近くが勤務時間や日数、業務内容の負担等の軽減を希望しているにも関わらず、実際には8割以上のケースで働き方が子どもの生まれる前から変化しておらず、他方の女性医師は、男性医師と同様に業務負担を減らしたいにも関わらず減らせていないケースがある一方で、希望しない求職や離職に追い込まれているケースが少なくないことが浮き彫りになっています。

図4 育児中の働き方(常勤医師)

図4 育児中の働き方(常勤医師)


出典:医療勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の 取組みに対する支援の充実を図るための調査・研究 事業報告書(厚生労働省 2016年)

タスクシェアの現状と改善余地

最後に、他職種との分担に費やした時間(図5)、および、今後他職種に分担できそうなタスクの割合(図6)について見ていきましょう。

図5 他職種(看護師や事務職員等のコメディカル職種)との分担 (12月14日の1日に費やした時間(分))

図5 他職種(看護師や事務職員等のコメディカル職種)との分担 (12月14日の1日に費やした時間(分))


出典:医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査 (厚生労働省 2017年)

図6 他職種(看護師や事務職員等のコメディカル職種)との分担 (他職種に分担できる割合(%))

図6 他職種(看護師や事務職員等のコメディカル職種)との分担 (他職種に分担できる割合(%))


出典:医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査 (厚生労働省 2017年)

これらの結果から、1日のうちに5つの業務に費やした平均約 240 分のうち、20%弱(約47分)は他業種に分担可能であることが示唆されており、今後、他職種とのタスクシェアによる業務負担の軽減、勤務時間の短縮についても議論が深められていくことになります。

本稿では、1.施設による医師の労働時間の把握が課題であること、2.長時間の労働と業務効率の間には負の相関が示されていること、3.現状では、男性医師も女性医師も、育児中に希望する勤務形態を実現できないケースが多いこと、4.タスクシェアの余地が残されていそうであることについて、調査結果と共にお伝えしました。

次稿では、今後の「働き方改革」の議論のポイントについて、2月に発表された「医師の働き方改革に関する検討会」の2つの報告内容を中心に整理してお伝えします。

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