リフィル処方箋のクリニックへの影響は?

 

 令和4年度診療報酬改定の議論もいよいよおおづめを迎えています。12月には基本方針が策定され、改定率が決まりました。また、1月14日には厚生労働省から中医協に諮問が行われており、今後は点数の調整に入り、2月には概ね決まることとなります。
 今回の診療報酬改定は、コロナ禍で初めての改定であり、コロナ禍で露呈したデジタル化の遅れや地域連携の未成熟などが課題として取り上げられています。また、超高齢社会を迎えている我が国が今後も継続して社会保障制度を維持するためには、医療費の抑制は大命題となっています。

「リフィル処方箋」の開始

  今回の改定率については大方の予想通り、本体はプラス、薬価等マイナスという決着になりました。しかしながら、クリニックにとっては、本体がプラスだからといって楽観することはできません。医療費の抑制の一つの方法として、かつてから準備を進めていた「リフィル処方箋」がいよいよ開始されることになったのです。
 1月14日に中医協より示された「議論の整理(案)」では以下のように示されています。

〇 症状が安定している患者について、医師の処方により、医師及び薬剤師の適切な連携の下、 一定期間内に処方箋を反復利用できるリフィル処方箋の仕組みを設ける。
〇 患者の状態に応じた適切な処方を評価する観点から、リフィル処方箋により処方を行った場合について、処方箋料の要件を見直す。

 このように「リフィル処方箋」という新しい仕組みを開始し、リフィル処方箋の運用に合わせて、処方箋料自体も変更するとしています。

リフィル処方箋とは

 この「リフィル処方箋」とは、一定の期間内であれば反復使用できる処方箋のことです。患者が薬を必要なときに、調剤薬局でリフィル処方箋を提出すれば、医師の診察を受けなくても薬をもらうことができるようになるのです。リフィル処方箋は、日本ではまだ導入されていませんが、欧米諸国ではすでに導入されています。
現在のルールでは、患者が処方箋を持たずに薬局に行っても、薬剤師は基本的には、薬を出すことができません。すべての患者がいかなる場合も必ず、医師の診察を受けた上で処方箋を薬局に提出して、薬を処方してもらうというルールになっています。この従来の調剤の流れを変えるのが「リフィル処方箋」なのです。

リフィル処方箋のクリニックへの影響

 リフィル処方箋の具体的な仕組みはまだ明らかにされていないため、詳細なところは分かりません。現在、分かっている範囲でクリニックへの影響ついつ考えてみたいと思います。
(1)受診頻度が減る
リフィル処方箋は、医師の診察がなくとも薬がもらえることになり、状態が安定していて定期的に薬を服用している患者、たとえばアレルギーの薬などを毎年もらっている患者は、リフィル処方箋を選択することで、受診頻度が減っていくことが予想されます。
(2)患者数が減る
クリニックは、リフィル処方箋を希望する患者が多ければ、そのまま患者数減、売上減となることが予想されます。検査や処置、リハビリなどがない患者にとっては、リフィル処方箋は選択肢のひとつとして今後要望が増えることが予想されます。
(3)オンライン診療・服薬指導が増える
 また、今回の改定では、「オンライン診療・オンライン服薬指導」について、コロナ禍で時限的に認められた内容の恒久化が議論されています。リフィル処方箋とオンラインを組み合わせると、急激にニーズの拡大が生まれるのではないかと考えます。
例えば1回目の診察はクリニックで受診しリフィル処方箋をもらい、次に薬をもらう際には、「オンライン服薬指導」を受けて、薬を配達してもらう。そうすると、薬局の受診すらも減らすことが可能になるのです。患者にとっては、クリニックそして薬局に行かなくても薬が受け取れる時代が来ようとしているのです。

リフィル処方箋に合わせた体制整備

 リフィル処方箋が解禁されても、最初のうちはなかなか普及が進まないとの考え方もあります。リフィル処方箋の発行は、「病状が安定している」と医師が認めた場合に限るため、信頼できる薬局・薬剤師がパートナーとしていなければ、リフィル処方箋を選択するのは難しいと考えます。しっかりと服薬指導ができ、患者の病態変化を察知して医師に連絡できる薬剤師でなければ、任せるのは危険だと考えるからです。今後、クリニックと薬局の連携体制がますます重要になると考えます。
 今回のリフィル処方箋については、初めての試みのため、安全面、重症化予防の配慮がされるため、かなり限定的な内容となるかもしれません。しかしながら、改定ごとに規制緩和が進むことが予想され、その対応はクリニックの経営根幹を揺るがすものになりかねません。徐々に患者が減っていき、気づいた時には手遅れとならないためにも、些細な変化にしっかり気づける体制(経営の見える化)をとることが大切です。

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