クリニックでの働き方改革とICT

街と空とICT

急速に進む少子高齢化を受けて、生産人口の減少とそれに伴う人手不足が顕著になりつつあります。また、政府主導のもと「働き方改革」が進められ、我が国の労働環境は大きく変わろうとしています。そのような中、クリニックにおいてもICTを活用して業務を効率化し、生産性を向上しようとする動きが見られます。今回は、ICTを用いたクリニック業務の効率化について考えます。

労働時間の把握と対策の実行

政府が提唱する働き方改革の波は医療機関にも押し寄せており、「残業時間の短縮」や「有給休暇の消化」など、クリニックにおいても対策を進める必要があります。そのためにはまず、各スタッフの労働時間の把握が必要となりますが、これまでクリニックの出退勤管理というと、紙のタイムカードを「人力」でエクセルに入力し集計しているところが多くありました。また、シフト管理についても、紙での運用が一般的でした。そこで近年では、「出退勤管理システム」や「シフト管理システム」を導入し、従業員の労働状況を把握するための合理化が進められています。

一方、これらのシステムはあくまで見える化を進めるための方策で、残業を直接的に減らすことはできません。残業を減らすためには、いまいちど業務の見直しを行い、残業短縮策を策定のうえ実行に移す必要があります。たとえば残業が特定のスタッフで起きている場合は、業務が集中していることを示しています。スタッフ間の業務配分を見直したり、ICTなどを活用することで業務自体を削減したりといった、根本的な問題解決の取り組みを実行することで改善が可能です。

精算業務の効率化

業務自体を削減するシステムのひとつとして、精算業務の効率化を進める「自動精算機」や「セルフレジ」の導入があります。これらがクリニックで普及しはじめている背景には、

(1) これまで大病院を中心に導入が進められた自動精算機が、クリニックの要望を受け省スペース化し価格が低下してきたこと
(2) クリニックにおいても人手不足が顕在化してきていること

などが挙げられます。また、「キャッシュレス」についても、自動精算機等の普及に伴って一般的になりつつあります。
これらは、2019年10月の消費税引き上げに合わせて、政府が「キャッシュレス還元事業」を行ったことで、世の中がキャッシュレスの流れに変わったことも大きく影響していると思われます。

受付業務の効率化

受付業務の効率化として、「再来受付機」についても導入検討が始まっています。「再来受付機」は、患者自らが診察券をバーコード等にかざしてチェックインを行うものです。しかしながら、月1回必ず発生する保険証の確認作業の問題から、受付を完全に無人化することは難しく、どうしても人が目視で保険証確認を行う必要があります。保険証の確認システムも存在するものの、まだ診療所で導入できるほどの価格にはなっていません。

来年から開始予定の「オンライン資格確認」がスタートすれば、保険証確認に関連する業務の手間が改善されると期待されますが、普及には少し時間がかかるように感じます。

問診業務の効率化

問診業務の効率化として、「Web問診」も導入が進んでいます。Web問診とは、従来の紙の問診票にかわって、患者がスマートフォンやタブレットから回答できるようにし、デジタルでの処理を可能にしたものです。同システムを導入することで、受付スタッフは電子カルテに問診内容を転記する作業を減らせますし、問診内容の不足を確認する作業も減らすことができます。Web問診の比率があがれば、スマホなどの操作に不慣れな方だけをスタッフがサポートする形になるため、大幅な業務効率化が図れます。

また、事前に問診票が入力されていると先回りして準備を行うことが可能となるので、患者対応がスピードアップします。Web問診システムの中には、問診票の内容から受診する診療科や疾患名を類推する機能が搭載されているものもあります。

レセプト業務の効率化

残業短縮や有給休暇の消化に最も影響している業務といえば、レセプト点検業務が挙げられるでしょう。このような背景から、レセプト点検業務を効率化するシステムとして「レセプトチェックシステム」に注目が集まっています。

もともと同システムは病院向けに普及していましたが、クリニック向けに機能を絞ることで低価格化が実現したことにより、クリニックでも導入が進んでいます。また、これまでの「レセプトチェックシステム」は、月1回のレセプト請求前にチェックを行うために使われるケースが多くありましたが、電子カルテと完全に連動することで、オーダーの際にリアルタイムでチェックすることも可能となっています。

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