「オンライン資格確認、半年間延期の理由」

 

本格運用の半年間の延期

3月下旬に本格稼働が予定されていた「オンライン資格」は、3月26日の社会保障審議会医療保険部会で半年間の延期が発表されました。オンライン資格確認は、薬剤情報の閲覧が始まる2021年10月を目途に稼働すると、仕切り直しさが決まったのです。
 そもそものオンライン資格確認のスケジュールは、2020年7月にポータルサイトアカウント登録、8月に 顔認証付きカードリーダの申込み、10月にオンライン資格確認利用申請、その後テスト運用を経て、2021年2月にプレ運用、2021年3月下旬に本格稼働という流れを予定していました。しかしながら、長引く新型コロナの影響などもあり、実際のスケジュールに遅れが出てきたことになります。

現状、カードリーダーの申込み状況

政府は、2021年3月末時点で顔認証付きカードリーダーについて、「医療機関・薬局の6割」の申込みを目標としていました。実際のところは、2021年4月11日時点の「顔認証付きカードリーダー」の導入率は、全体で12万9822件(56.8%)となり、内訳は病院が6417件(77.5%)、医科診療所が3万9983件(44.8%)、歯科診療所が3万5115件(49.5%)、薬局が4万8307件(80.4%)となっています。目標の6割にはわずかに届かなかったものの、かなり近いところまで来ていたことが分かります。一方で、医科歯科共に診療所での遅れが顕著になっています。

延期の理由

 延期理由については、3月26日の社会保障審議会医療保険部会で、詳細に報告されています。資料によると、医療機関・薬局側の「導入準備の遅れ」と、保険者側のプレ運用の中で発覚した「データ不備」が主たる理由のようです。
医療機関・薬局側の「導入準備の状況」については、新型コロナウイルスの影響等によるシステム改修の遅れ、世界的な半導体不⾜によるパソコン調達の遅れ、導入準備の遅れ、カードリーダーメーカーの生産遅れなどが挙げられています。
また、「プレ運用の状況」については、加入者データの不備による資格確認エラーや院内システムへの読み取りエラーなどが発生したと報告しています。
一方、保険者側の「データ登録の状況」については、コロナ禍による出勤制限等により、データの登録、確認・修正作業に時間を要していること、保険者が管理・登録している加入者データの正確性に課題があることなど深刻な問題が挙げられています。保険者内での取り違えなどにより登録した個人番号に誤りがあったり、被保険者証の情報が登録されていなかったり、被保険者番号が正確でなかったり、とデータそのものが本格稼働には不十分な状況が報告されています。

今後の対策と新スケジュール

今後の対策として政府は、「ヒューマンエラーが起こり得ることを前提に、システム的な対応を強化し、データの精査を⾏う」としていますが、今後順調に問題解決が図られるかは、かなり心配な様相であることは否めません。
仕切り直しとなった「オンライン資格確認」の本格稼働ですが、今回起きた医療機関等・保険者における現状と課題を踏まえて、オンライン資格確認のシステムの安定性確保やデータの正確性担保などの観点から、プレ運用を継続した(3月26日よりプレ運用の募集が再開されています)うえで、遅くとも10月までに、本格運用を開始するとしています。この間に、個⼈番号の誤りが⽣じないよう、個⼈番号の誤⼊⼒をシステム的にチェックする機能を導⼊することなどが発表されています。また、並⾏して、実際の運⽤を⾏いながらデータを検証し、精度を⾼めていくとしています。
政府は、オンライン資格確認を安定稼働させるため、現場の混乱を避けるために、「延期」という判断を下しました。今回の半年間の延期の間に、どこまで仕組みを精緻なものにできるか、マイナンバーカードをどこまで普及できるかが、本格稼働の成功要因です。コロナ禍で、医療界は様々な困難に見舞われており、政府も現場も大変な状況ではありますが、更なる延期にならないよう、着実な整備を期待します。

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