患者の待ち時間が増加するメカニズムとは?

医療現場におけるITへの3つのニーズ

患者が増えるにつれて、「患者の待ち時間が長くなった」「スタッフの残業が増えた」という声をよく聞きます。患者数の多いクリニックであればやむを得ず起きることではありますが、患者の待ち時間の問題が解決すれば、スタッフの残業増加も解消されることが多いようです。待ち時間の問題が少しでも解消できれば、患者やスタッフだけでなく院長にとっても喜ばしいことでしょう。本稿では、待ち時間増加のメカニズムを明らかにするとともに、その対策について考えます。

患者の待ち時間増加のメカニズム

 それでは、なぜ「患者の待ち時間」が発生するのでしょうか。その原因は「患者集中」と「患者1人当りの滞在時間の増加」が考えられます。

 患者が集中する時間帯は、「朝の受付開始直後」、「昼休み前後」、そして「診察終了間際」の3つがあります。患者が集中して来院する心理は、その立場で考えれば明らかです。体調が悪ければ「できるだけ早く診てほしい」と考え、朝一番でクリニックに訪れます。一方、会社員などは「お昼の休憩時間か、勤務時間終了後しかクリニックに行けない」と考えることから、その時間でなるべく早く診てもらおうとします。

患者集中の対策

 患者の集中を緩和する策としては、患者集中が起きないような「告知」が有効です。たとえば、「順番管理システム」を導入し、院外からWebサイトを経由して「混雑状況」をアナウンスする方法があります。このシステムを導入することで、クリニックに行ったり電話で問い合わせたりしなくても、外から患者自身が混雑状況を把握できるようになります。来院する前に予約や待ち状況を確認することで、自然と混雑を避けるような行動が促されるのです。

オペレーションの改善による滞在時間増加の対策

 一方、「患者1人当りの滞在時間の増加」については、診察、処置、検査、カルテ作成といった一連の診療の流れの中で、少しずつ発生する時間のロスが積み重なり、その結果待ち時間が増加する現象です。オペレーションがうまくいっている場合と、そうでない場合で大きく差が出る部分でもあります。それでは、どう解決すればよいのでしょうか。

 まず、現在のオペレーションを見直すことからはじめます。現在のオペレーションの中でタイムロスになっている部分はないでしょうか。受付であれば「受付からカルテが準備されるまでの時間」、診察室であれば「診察時間」や「カルテ作成時間」、会計であれば「診察終了後から会計するまでの時間」などに分けて考える必要があります。

診察時間に注目した対策

これらの時間を短縮する方法として、今回は「診察時間」に注目してみましょう。診察時間のタイムロスの原因は、患者の話や医師の診察が長いことも理由の1つですが、これを改善するのは簡単ではありません。診察自体を短縮すると、患者の不満につながってしまうこともあります。そこで、「いかに限られた時間に多くの患者を診ることができるか」という点に着目する必要があるのです。

 たとえば、医師が1人で2つの診察室を利用する体制にして、医師と看護師が交互に患者を診る方法が考えられます。初診患者の場合、看護師が問診表に基づき予備診療(予診)を行い、その間に医師は別の患者を診る。こうすることで、同時に2人の患者を診ることが可能になります。診察室を2つ設けるスペースがない場合は、処置室を活用するのも一つの方法です。

 また、電子カルテ入力をサポートする「医療クラーク」を活用することも、診察時間の短縮には有効です。患者が少ないときは診察の間に余裕を持ってカルテを入力できますが、その間隔が短くなるとカルテの入力時間が合間に収まらなくなります。その結果、カルテを入力する時間がタイムロスとして積み重なり、患者の待ち時間の増加につながることもあります。しかし、医師が診察しながら指示を出し、同時に医療クラークが電子カルテを入力すれば、診察後に入力の時間を取る必要がなくなり、スピーディに診察が回るようになるのです。

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