診療所におけるポストコロナ対応

ポストコロナイメージ

2020年5月現在、幸いにして本邦では、新型コロナウイルス感染症の拡大を抑えることに成功し、緊急事態宣言が解除されつつあります。一方で、特効薬やワクチンがない現状、感染の拡大をいったん抑えられたとしても、第2波、第3波が起こるリスクがあります。この状況に対応して、政府の専門家会議は、コロナ禍における中長期的な対策として「新しい生活様式」を提言しました。本稿では、ポストコロナ時代に診療所でどのような対策が必要か考えます。

「緊急事態宣言」の解除

 5月14日、47都道府県のうち北海道と関東・関西の8都道府県を除く39県で、新型コロナウイルス対策の「緊急事態宣言」が解除されました。これに続いて5月21日には関西の3府県が解除され、5月25日には残っていた北海道と関東の5都道県についてもすべて解除の運びとなりました。

 しかし、緊急事態宣言の解除が、完全な終息を意味するわけではありません。専門家によると、新型コロナウイルスが終息するには特効薬やワクチンができるまで待つ必要があり、それには数年はかかるとしています。この期間、経済を完全に止めてしまうことはできません。新型コロナウイルスの第2波、第3波に備えながら、生活を続けていく必要があるのです。

新しい生活様式

 では、新型コロナウイルスの感染リスクをできるだけ抑えながらも、経済活動を再開するためにはどうすればよいでしょうか?それが、政府によって提示された、緊急事態宣言解除後の「新しい生活様式」という機軸です。厚労省がホームページで公表した資料によると、新しい生活様式の実践例として、

①一人ひとりの基本的感染対策(距離の確保、マスク着用、手洗い、最小限の移動)
②日常生活を営むうえでの基本的生活様式(手洗い・手指消毒、3密の回避、健康チェック)
③日常生活の各場面別の生活様式(買い物、交通機関の利用など場面ごとの行動制限)
④働き方の新しいスタイル(テレワークの推奨、オンライン会議・名刺交換など)

の4点が挙げられています。今回提示された生活様式を、医療機関の受療行動に当てはめることで、医療機関への影響が見えてきます。

 参照:新しい生活様式の実践例<厚労省HP>
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html

新しい生活様式に合わせた「新受療行動」

 政府が提示した新しい生活様式では、感染対策を引き続き徹底し、できるだけ不要不急の外出を控え、3密を避けることなどが求められています。これにより、診療所にとっては、3月〜5月に見られたような外来患者と入院患者の減少が、緊急事態宣言の解除後も続くと予想されます。

 不要不急の外出を控え、3密を避けるという行動は、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるだけではなく、通常のかぜ症状やインフルエンザ、既存の感染症の蔓延を減少させる効果があり、これによって医療機関の受診が減少します。また、3密(密閉・密集・密接)の禁忌や、度重なる医療機関でのクラスターの報告が、患者様に対して「医療機関に行くのを避けたい」というマインドを作り出し、ぎりぎりまで医療機関の受診を先延ばしするという「新しい受療行動」につながることでしょう。外来受診の自粛が医療機関の患者数減につながることは容易に予想されます。現に3月〜5月は、様々な診療所から大幅な外来患者数の減少が報告され、前年比で5割減から、多いところでは8割減といったところも見受けられます。

 このような外来減少時代に、診療所はどのように対応する必要があるのでしょうか。結論から申しますと、診療所は「安心して受診できる環境づくり」を徹底的に行う必要があるでしょう。改善のキーワードは、「密集」「密接」「密閉」の3密対策です。

ICTを活用して診療所の「3密」を避ける

 「密集」「密閉」については、待合室の改善が考えられます。これを機に、多くの患者様が持っているであろう「待合室で長く待つ」「混雑した待合室」という、これまでのイメージを抜本的に見直し、診療予約システムなどを活用して「待たない・混んでいない」待合室を作り出す必要があります。

 また、「密接」については、できるだけ患者様同士、患者様とスタッフ、スタッフ同士の接触を少なくすることが重要です。そのためには、患者様同士の距離を保てる待合室の席の配置や、患者様とスタッフの接触をできるだけ減らすことのできる自動受付機、自動精算機、キャッシュレスといった受付業務の自動化に取り組んでみてはどうでしょうか。車移動が主流の地域では、ドライブスルーでの受付や精算、薬の受け渡しの実践が行われています。4月10日に認められた電話やオンラインでの診療も、引き続き増加していくことが予想され、市民権を得るのではないかと考えます。患者様の受療行動の新しい形として認識し、対応することが必要です。

 診療所はいま、新しい受療行動への対応が求められています。これから始まるポストコロナ時代に向けて、ICTを活用して徹底的な「オペレーションの変革」を行ってはいかがでしょうか。今まで通りのやり方は通用しない時代がやって来ているのです。

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