診療所にも自動精算機普及の波

昨今、少子高齢化の影響から人手不足が深刻化しています。そのため、いろいろな業態で働き方改革や生産性向上を意識したシステム導入が進みつつありますが、その一つとして最近よく目にするのが自動精算機です。今回は、診療所に自動精算機を導入した場合の「精算業務の自動化」について解説します。

生産性向上とは?

生産性とはもともと経済学の用語で、少ないインプットで大きなアウトプットが生み出せれば生産性が高いと見なす考え方です。診療所では何をインプット/アウトプットと定義し計測するかは難しい問題ですが、本稿では人手不足や働き方改革といった診療所経営の観点から、発生した診療報酬や費用などを指標に考えてみましょう。

この考え方でいくと、診療所におけるアウトプットとは保険診療と自費診療を足したもので、いわゆる「売上」にあたります。インプットは、医薬品、医療材料、人件費、家賃、水道光熱費、委託料、システム費などを足したもので、いわゆる費用にあたります。診療所で生産性を高めるためには、これらのうちどの指標を改善すればよいのでしょうか。

診療所でもコストダウンの動き

我が国はデフレが長引いており、物価や賃金に連動して決まる「診療報酬改定率」も、横ばいかマイナス改定がこの10年以上続いています。その一方で、新規に開業する診療所は一貫して増加傾向にあり、競争が激化しているので患者数の大幅な増加は見込めません。売上増が見込めない現状では、費用を抑えるしか生産性向上が図れなくなっているのです。

また、診療所経営にかかる費用の内訳は、人件費が50~60%と大きな割合を占めます。そのため、人件費の見直しがもっとも生産性向上へ寄与するのですが、働く人の数を減らしてしまうと業務に支障が出てしまいます。こういった理由から、ICT等を用いた省力化に注目が集まっています。

「受付」のコンピュータ化が進む

一般的に、ヒトからコンピュータに置き換えが進めば一時的な投資は増えますが、一定期間を超えるとコスト低減効果が生まれます。この効果を意識して、急速にコンピュータへの置き換えが進んだ部門が「受付」です。たとえば、駅の自動券売機から銀行のATM、はてはラーメン屋の食券機まで、受付はヒトからコンピュータにどんどん変わってきています。また、レジスターの進化も著しく、最近は「レジ打ち」という仕事も減っています。スーパーマーケットやコンビニでも、商品の代金をレジに投入するだけで釣銭が自動的に出てくる自動精算機をよく見かけるようになりました。

診療所にも自動精算機や再来受付機導入の波が

医療界でも、受付をコンピュータに置き換える動きが進んでいます。電子カルテの導入に合わせて、再来受付機や自動精算機が入るようになりました。当初は価格が高額であったことから、大規模病院から順番に設置が始まりましたが、普及に伴って価格が安くなったことで、いまでは病院だけでなく診療所にも置かれるようになっています。実際、診療所に「導入したいシステム」のヒアリングをすると、最近はその多くが「自動精算機」を挙げるようになっています。

自動精算機導入の効果と注意点

では、診療所に自動精算機を導入すると何が起こるのでしょうか?期待する効果と注意点を少しご紹介しておきましょう。

効果

(1)精算(レジ)業務がなくなることで、レジを担当していたスタッフの負担が軽減される。
(2)ヒトがレジを操作しないため、入力間違いがなくなる。
(3)レジの金額間違いがなくなるため、日々レジを合わせる作業がなくなる(会計周りの残業が減る)。

自動精算機導入により、ヒトの削減と時間短縮を図ることができます。さらにいえば、人為的ミスが消滅するため、経営者にとっては間違いを注意する、スタッフが間違いを指摘されるといった、日々のストレスも解消されるのです。精算業務をコンピュータに移管することで、高い効果がもたらされるといえるでしょう。

注意点

(1)自動精算機の選定・導入時には、電子カルテ(レセコン)との連携レベルを確認する必要があります。電子カルテと連携させる運用と、させない運用があり、前者は連携費用が掛かりますが、電子カルテとの連携で高度な自動化が実現します。
(2)現在のワークフローとの相違点の明確化も重要です。レジに人がいらなくなるといっても、最初のうちは操作説明のためのスタッフを配置している場合がほとんどです。1カ月もすると患者様も慣れてきて、操作説明が不要になってくるようです。
(3)自動精算機の機種によっては、キャッシュレス決済の機能も備えている場合がありますが、キャッシュレスには手数料がかかりますので、追加費用や費用対効果についても検討が必要です。
(4)電子カルテと連携できなければ、未収金や返金に対応できません。その場合、患者様は受付に戻り手動で対応することになります。未収金及び返金処理の対応を自動精算機でするかどうかの検討が必要です。

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